営業DXとは?進め方の5ステップと、ツール選びより先に決めること
営業DXは、デジタルの仕組みを使って営業のやり方そのものを変える取り組みです。ゴールはツールを導入することではなく、誰が担当しても同じ手順で進み、次に何をするかを数字で判断できる状態にすることです。
多いつまずき方は、営業の流れを段階に分けないままツールを選んでしまうことです。何を入力するか、その数字を誰がどの会議で使うかが決まっていないと、入力の手間だけが増え、担当者が売上に近い仕事に使える時間はかえって減ります。
この記事では、デジタル化や効率化との違い、営業DXで変える4つのもの、進め方の5ステップ、ツールを選ぶ前に決めること、止まりやすい5つの理由、事例の読み方を順に説明します。
目次
営業DXとは
営業DXは、デジタルの仕組みを前提に、営業の進め方・判断の仕方・評価の仕方を組み直す取り組みです。対象は道具だけではなく、誰が・どの順番で・何を見て動くかまで含みます。
似た言葉と並べると、どこまでを変える話なのかがはっきりします。
| 変える対象 | 目的 | 終わりの判断 | |
|---|---|---|---|
| デジタル化(IT化) | 道具と記録の形 | 紙や手作業をデジタルに置き換える | 置き換えが終われば完了 |
| 営業の効率化 | 作業にかかる時間 | 売上に近い仕事に使える時間を増やす | 時間が減れば一区切り |
| 営業DX | 進め方・判断・評価 | 同じ手順で進み、数字で判断できる状態にする | 見直しが前提なので終わらない |
営業の効率化との違い
営業の効率化は「作業にかかる時間」を対象にします。営業DXは、その手前にある進め方そのものと、結果をどう見るかまでを対象にします。
重なる部分は多く、どちらから入っても構いません。ただし時間の行き先を測らないまま仕組みだけ変えると、効果の小さい場所を変えて終わることがあります。先に時間の使われ方を把握したい場合は、営業の効率化の進め方で手順を確認してください。
デジタル化だけで止まるとどうなるか
紙の日報を入力フォームに置き換えても、その内容が会議で使われなければ、担当者にとっては作業が1つ増えただけです。記録は「残すこと」ではなく「使われること」が決まって初めて続きます。
営業DXで変える4つのもの
何を変えるのかを分けておくと、どこまで進んだかが分かります。
| 変えるもの | 変える前 | 変えた後 |
|---|---|---|
| 情報 | 担当者の頭と個人のファイルの中にある | チームで見られる場所に、決めた項目で残る |
| 進め方 | 人によって順番と判断が違う | 段階と、次に進む条件が決まっている |
| 判断 | 感覚と経験で決める | 段階ごとの件数と率を見て決める |
| 評価 | 受注金額だけを見る | 行動と結果の両方を見る |
このうち最初に手を付けるのは「進め方」です。進め方が決まっていないと、何を情報として残すべきかも、どの数字を見るべきかも決まりません。
営業DXの進め方5ステップ
1. 営業プロセスを段階に分ける
今の営業が、見込み客と出会ってから受注するまでにどんな段階を通っているかを書き出します。理想の形ではなく、実際にやっていることを書くのが先です。
段階の分け方と、次の段階に移る条件の決め方は営業プロセスの作り方にまとめています。
2. 段階ごとに見る数字を決める
段階ごとに「件数」と「次の段階に進んだ割合」を決めます。この2つがあると、減っている場所を特定できます。
| 段階 | 見る数字 | 下がっているときに疑う場所 |
|---|---|---|
| 接点づくり | 連絡件数 | 作業時間、リストの量 |
| 会話 | 会話件数・会話率 | 手段の選び方、連絡する時間帯 |
| 商談 | 商談件数・商談化率 | リストの条件、トークや文面 |
| 受注 | 受注件数・受注率 | 商談に進める条件、提案の内容 |
どの数字を目標にするかの決め方は営業のKPIの決め方で解説しています。
3. 記録の置き場所と入力の担当を決める
ツールを選ぶ前に、次の3つを決めます。ここが曖昧なまま導入すると、入力が続かずに止まります。
- 誰が、いつ、何を入力するか
- 入力された情報を、誰がどの会議や判断で使うか
- 入力しなくてよい項目はどれか
3つ目は見落とされがちですが重要です。入力項目を減らすほど、記録は続きます。
4. 1つの段階だけ変えて試す
全部の段階を同時に変えると、効果が出ても出なくても原因が分かりません。最初は一番人数が動いている段階を1つ選び、そこだけ変えます。
試す期間は、その段階の件数が判断できるだけ溜まる長さにします。月に数件しか起きないことを2週間で判断しないようにします。
5. 会議で数字を使う
最後が一番大切です。決めた数字を、週次や月次の会議で実際に使います。会議で使われない数字は、やがて入力されなくなります。
会議では「数字が目標に届いたか」だけでなく、「どの段階で減ったか」「次に何を変えるか」まで決めます。ここまでやって、ようやく仕組みが回り始めます。
ツールを選ぶ前に決める3つのこと
ツールは手順を支える道具です。選ぶ前に、次の3つを決めておきます。
- どの段階の、どの作業の時間を減らしたいか
- 入力する項目と、入力する人
- その情報を使う会議と、使う人
この3つが決まっていれば、候補は自然に絞れます。種類ごとの向き不向きは次の通りです。
| 種類 | 向いている課題 | 入れる前に決めること |
|---|---|---|
| CRM/SFA | 商談の状況が担当者しか分からない | 段階の定義、入力項目、使う会議 |
| MA | 問い合わせ前の見込み客を追えていない | 追う条件と、営業に渡す基準 |
| 名刺管理・企業リスト | リスト作りに時間がかかる | リストの条件(業種・規模・地域) |
| オンライン商談・録画 | 商談の中身がチームに共有されない | 録画の保存場所と、見る場面 |
| 生成AI | 下調べ・議事録・文面作成に時間がかかる | 入力してよい情報の範囲 |
CRM・SFA・MAの役割の違いと、導入しても定着しない理由はSFAとはで解説しています。
生成AIを営業の作業に使う場合の範囲と社内ルールは、生成AIで業務効率化する方法にまとめています。
営業DXが止まる5つの理由
| 止まる理由 | 起きていること | 先に直すこと |
|---|---|---|
| 入力が目的になっている | 項目が多く、埋めること自体が仕事になる | 使わない項目を消す |
| 数字が会議で使われない | 入力しても誰も見ない | 会議の議題に数字を入れる |
| 全部を同時に変えた | 効果の原因が分からない | 1つの段階に絞る |
| 進め方を決めずに導入した | 人によって入力の粒度が違う | 段階と移る条件を先に決める |
| 属人化がそのまま残っている | 仕組みの外で例外が動き続ける | 判断のルールを文章にする |
5つ目は見えにくい割に影響が大きいものです。判断のルールを文章にする手順は属人化を解消する手順で解説しています。
事例を読むときに確認する3つのこと
他社の事例は参考になりますが、条件が違えば結果も変わります。読むときは次の3点を確認すると、自社に当てはめられるかを判断しやすくなります。
- 条件が近いか — 商材の単価、検討にかかる期間、営業の人数が自社と近いか
- 変えたのは仕組みか人か — 人を増やした結果なのか、進め方を変えた結果なのか
- 何と比べた数字か — 前年同月か、導入前の数か月の平均か、比較の相手が書かれているか
3つ目が書かれていない数字は、良くなったのか季節の差なのかを判断できません。
社内に進める人がいないときは
営業DXは、進め方を決める人と、日々の営業を回す人の両方が必要です。人数が足りない場合は、どちらかを外部に任せる選択肢があります。
- 進め方を決める部分を任せる — 段階の定義、見る数字、記録の決め方を一緒に作る
- 日々の営業を任せる — 接点づくりや商談づくりを外部が担当し、社内は提案に集中する
それぞれの違いと費用の考え方は営業支援とはと営業代行とはで比較しています。
よくある質問
何人くらいの会社から営業DXは必要ですか?
人数よりも、担当者が2人以上いて引き継ぎが起きるかで考えると判断しやすくなります。1人で完結していても、休んだときや増員するときに同じ問題が起きるため、段階と記録の形だけでも決めておくと後が楽になります。
ツールは何から入れるべきですか?
ツールの種類から選ぶより、先に「どの段階の数字が見えていないか」を決めるほうが早く決まります。商談の状況が見えていないならCRM/SFA、リスト作りに時間がかかっているならリスト関連、というように、困っている場所から選びます。
どれくらいで効果が出ますか?
段階によって変わるため一律には言えません。まず見るべきは成果ではなく、決めた入力が1か月続いたかです。続いていなければ項目が多すぎるか、使われていないかのどちらかで、成果を待っても変わりません。
既存のやり方を変えたくない担当者がいます
手順を増やす話として伝わっていることが多いため、入力してもらう代わりにやめる作業を1つ決めると進みやすくなります。日報と入力の二重管理をやめる、といった形です。
まとめ
- 営業DXのゴールは、ツールの導入ではなく、同じ手順で進み数字で判断できる状態をつくること
- 変えるのは情報・進め方・判断・評価の4つで、最初に手を付けるのは進め方
- 進め方は、段階に分ける → 数字を決める → 記録の形を決める → 1つの段階で試す → 会議で使う、の順で進める
- ツールは、入力する人と使う会議を決めてから選ぶ
- 会議で使われない数字は入力されなくなるため、最後のステップを省かない
当社の営業支援サービスは、商談に進める条件を事前に決めたうえで、テレアポ・フォーム営業・SNS DM・手紙・FAXの5つの手段を月額固定で運用し、リストや文面などの作成物は社内に残ります。どの段階から仕組みにしていくかのご相談はお問い合わせからお気軽にどうぞ。